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▼金属元素は、生命をどう支えているのか?
私たちの体には、わずか0.1%にも満たない量で生命を支える必須微量ミネラルが存在します。必須微量ミネラルである亜鉛・銅・鉄・マンガンといった金属元素は、免疫、代謝、神経機能など実にさまざまな生命現象を支えています。一方で、これらの元素は 不足しても過剰になっても生体に障害を与えるため、体内では極めて精密な調節機構によって恒常性が維持されています。本研究室では、亜鉛を中心に銅・鉄・マンガンなどの金属元素が、「どのように選ばれ、どのように利用され、どのように制御されているのか」を、分子・細胞・個体レベルで明らかにする研究を行っています。
▼① 細胞内亜鉛ホメオスタシス研究を通じた亜鉛生物学の解明
亜鉛は、創傷治癒、味覚、免疫機能、さらには記憶や学習に関わる神経機能まで、多岐にわたる生体機能に関与する必須微量ミネラルです。なぜ亜鉛はこのように多様な機能を有するのか、その理由の一つは、亜鉛が、酵素の補因子・タンパク質の構造因子・シグナル伝達因子という極めて多面的な性質を持つことにあります。最新のプロテオーム解析では、ヒトのタンパク質のうち4800種以上が亜鉛と結合することが示され、亜鉛は生命活動の中心的な金属元素の一つであることが再認識されました。
細胞内では、亜鉛の恒常性の維持のため、亜鉛トランスポーター・メタロチオネイン・亜鉛シャペロン・亜鉛応答性転写因子など多種多数の亜鉛タンパク質が協調して働いていると考えられています。しかし、これらの亜鉛タンパク質がどのようにして連携するのか、また、他の金属元素と亜鉛をどのように区別しているのかについては、未解明な点が数多く残されています。本研究室では、代謝に関連した亜鉛タンパク質の機能解明を通じて、亜鉛生物学の全体像の解明を目指しています。

・亜鉛酵素の金属獲得機構とホロ酵素成熟過程の分子基盤
・亜鉛トランスポーターによる亜鉛ホメオスタシス制御機構
・細胞内亜鉛分配にかかわるシャペロン分子の同定
▼② 亜鉛栄養を活用した健康維持・増進の実現を目指す応用研究
現在、日本人の約3割が亜鉛不足状態にあると報告されています。消化管での亜鉛の吸収効率は約30%と低いため、亜鉛栄養を充足させるためには効率を上げることが重要となります。当研究室では、消化管における亜鉛の吸収機構を解き明かし、亜鉛栄養を改善させることを通して健康維持・増進への貢献を目指しています。

・消化管における亜鉛吸収機構
・亜鉛吸収を高める食品因子の探索
・母乳中へ亜鉛を供給する亜鉛トランスポーターの発現制御
・ビタミンB代謝における亜鉛の重要性
・必須微量ミネラルによるNutritional Immunity
▼③ 細胞内の鉄・銅・マンガン代謝に関わる基盤研究
ヒト体内には、鉄結合タンパク質は約400個、銅結合タンパク質は50個超、マンガン結合タンパク質300個程度あると推定されています。本研究では、亜鉛の解析で確立した手法を、鉄・銅・マンガンといった金属元素の解析に応用し、代謝機序の全容解明を目指します。特に、これらの金属元素は亜鉛と異なりレドックス元素であるため、その特性に着目し、生理機能解明へ向けた研究を実施します。

・メタロチオネインによる鉄・銅由来活性酸素障害の抑制機構
・亜鉛と銅の競合による生理活性調節
・鉄とマンガンの競合による生理活性調節
▼④ 金属元素の相互作用と亜鉛による障害予防機構
亜鉛は生体内で二価陽イオンとしてのみ存在するため、レドックス活性は持っていまませんが、抗酸化機能を有しています。亜鉛の抗酸化機能は、亜鉛誘導性のタンパク質メタロチオネインを介して発揮されると予想されています。しかしながら、この「亜鉛→メタロチオネイン経路」が「金属元素である鉄・銅・マンガンのレドックス活性による生体障害」を防ぐ上でどれほど重要な役割を担っているのかについては、個体や細胞レベルで十分な解析は行われていません。当研究室では、金属元素間の精緻な制御ネットワークを解析し、この謎に取り組んでいます。

・メタロチオネインによる鉄・銅由来活性酸素障害の抑制機構
・亜鉛と銅の競合による生理活性調節
・鉄とマンガンの競合による生理活性調節
▼⑤ なぜ生物は「特定の金属元素」を選ぶのか?
生物はなぜ、数多ある元素の中から特定の金属元素を選び、生命反応に利用するようになったのでしょうか。私たちはこの根源的な問いに向き合い、分子機構の解明と進化的視点の両面から研究を進めています。必須微量ミネラルの理解を深めることで、生命の成り立ちを知り、健康科学へとつなげることを目指しています。
・生体内の金属元素選択性の分子・進化的基盤の理解
・金属結合タンパク質の収斂進化と分岐進化に関する研究
▼ こんな学生さんに向いています
・分子生物学・細胞生物学・栄養学を基盤とした研究に興味がある
・生命現象を「金属元素」という新しい視点から深く理解したい
・基礎研究と健康・栄養科学をつなぐ研究に挑戦したい

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